第三十八巻 鈴虫(すずむし)

あらすじ

 夏の蓮の花の盛りに、女三の宮が念持仏の開眼供養を行なった。内裏や朱雀院からの御布施が届いて盛大な催しとなった。源氏は女三の宮の新しい居所として三条宮の準備を整える一方で、まだ手放したくない思いでいる。庭に虫を放って、秋の野の風情を楽しもうと女三の宮の居室を訪れた。源氏は尼姿となった女三の宮に離れがたい想いを訴えるが、人目には変わらぬ扱いに見えても、やはり密事を知っている気配がはっきりとわかるので、女三の宮は源氏のもとを早く逃れたいと願うのでだった。
 十五夜の夕暮、六条院に集った公達は虫の音比べなどをしながら琴を合奏し、鈴虫の宴を楽しんでいた。すると噂を聞きつけた冷泉院から誘いがきた。人々は車を押し立てて参上し、にぎにぎしい宴となる。退位後の冷泉院と仲睦まじく暮らす秋好中宮は、母(六条御息所)が冥界をさまよう物の怪となっていることに心を痛め、出家したいと源氏に打ち明けた。
 木村朗子(田口榮一監修『すぐわかる源氏物語の絵画』東京美術より)

 

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