あらすじ
故桐壺院の八の宮(源氏の異母弟)は、かつて朱雀院の母后、弘徽殿女御の奸計に利用されたため、時勢が源治方へと一変してのちは、不遇にかこち、俗聖のようにしてひっそりと暮らしていた。長く暮らした邸が焼けてしまい、宇治に引き移ったが、侘び住まいのなかでも娘二人の行く末が心配で出家を思い切れずにいた。どうしてか仏道への関心が深い薫は、八の宮に心惹かれ、宇治を訪ねては親しく語り合うようになった。
ある夜、薫が訪ねていくと、八の宮は不在であった。琴の音につられて庭先へまわると、姫君たちの姿があらわに見えて、薫はすっかり心をうばわれてしまう。この日は薫の話し相手となる人もおらず、奥から老女房が呼ばれるが、この女房がなにやら仔細ありげなようす。かつて柏木に仕えた者で、臨終の遺言に女三の宮に贈られた手紙の束を預かっていた。薫は思いがけず自らの出生の秘密を知るのであった。
木村朗子(田口榮一監修『すぐわかる源氏物語の絵画』東京美術より)
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