あらすじ
桜の咲きほこる頃、宮中で花の宴が催された。桐壺帝の左右に、東宮と后の位に上がった藤壺の座が用意され、弘徽殿女御は苦々しい思いである。
夜更けまで続いた宴のあと、源氏は酔い心地に藤壺のあたりをうかがい歩くが戸口は閉じられていた。そのまま弘徽殿のあたりへいくと開いた戸口があり、もうここの者たちは寝てしまったのかと入ってみると、若やかな声で「朧月夜に似るものぞなき」と口ずさみながらやってくる人がいる。源氏は心ときめかせてその袖を捉え一夜をともにし、扇を交換して別れた。
女は弘徽殿女御の妹で、まもなく東宮入内をひかえているのであった。一月後、右大臣家で藤の宴が催された。酔ったふりをして宴を抜け出した源氏は、女たちの集うあたりで「扇をとられてつらいめをみる」と声をかけてみた。見当違いの返答のかげで、なやましげに嘆息する人がいる。几帳ごしに手をとられて歌を詠みかけると、まさしくあの朧月夜の女であった。
木村朗子(田口榮一監修『すぐわかる源氏物語の絵画』東京美術より)
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