第九巻 葵(あおい)

あらすじ

 桐壺帝は攘夷し、朱雀帝の御代となった。源氏は万事物憂く、通い所へも無沙汰が続く。源氏の冷遇に苦しむ六条御息所は、斎宮になった娘とともに、伊勢に下ろうと決意した。
 葵祭の当日、光源氏をはじめ、今をときめく上達部が参列するというので、一条大路には大勢の見物人たち。六条御息所は一目源氏の姿を見れば慰めになろうと、目立たぬように物見の列にまぎれている。そこへ正妻葵の上の一行がやってきて、御息所の車を押しやろうとし、酔った従者たちの乱闘騒ぎとなった。
 御息所は悔しさにもだえながら葵の上をひきずりまわす夢を見る。ちょうどそのころ、難産に苦しむ葵の上に執拗にとりつく物の怪があった。源氏と二人きりになると葵の上は「物思いに沈む人の魂がその身からぬけていくというのは、本当のことのようですね」といった。その声はまさしく六条御息所のものであった。
 葵の上は男児を産み、ほどなくして息絶えた。
 木村朗子(田口榮一監修『すぐわかる源氏物語の絵画』東京美術より)

 

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