第二十八巻 野分(のわき)

あらすじ

 秋、六条院の秋好中宮の庭が美しく、春秋の趣を論じて春に心寄せた人々も心移りしそうな気配である。春のときのように宴を催そうかと思った矢先、例年にない激しい台風で建物までが倒壊する騒ぎとなった。かけつけた夕霧は紫の上の局の妻戸が開いているのを見た。ふと中を覗くと、強風で倒れぬように屏風がたたまれて奥まで見通しがきく無防備さである。風が吹き上げる御簾を女房たちがおさえているそばで、一際気高い女君が微笑んでいる。その美しさはまるで春の曙の霞の間に咲き乱れる樺桜のようだ。夕霧は初めて紫の上の姿を目にしたのだった。その美しい面影は、床についてもなかなか脳裏を去らない。源氏は夕霧が紫の上の姿を見たと勘づき、気が気でならない。
 翌朝、嵐の後で、夕霧は源氏とともに六条院の女君たちを一人ひとり訪ねてまわる。夕霧はこんな女君たちを明け暮れ眺めながらすごしたいものだと、陶然とする思いであった。
 木村朗子(田口榮一監修『すぐわかる源氏物語の絵画』東京美術より)

 

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