あらすじ
光源氏の亡あと、人々は源氏と紫の上のことを思わずにはいられない。六条院は、荒れ果てさせるにはしのびないと夕霧が引き継いだ。
光源氏の麗容には遠くおよばないものの、明石の中宮の御子と女三の宮の子の二人が、当代に並び称させる若君に成長していた。女三の宮の子は香をたきしめたわけでもないのに、この世のものと思えぬような薫香があって「薫中将」と呼ばれた。匂宮はそれに対抗して匂いをやたらつけているので「匂兵部卿」と呼ばれた。薫の母、女三の宮は静かに仏道にむかい、月ごとの御念仏や年に二度の御八講などを営んでいた。母は、親子が逆転したように薫に頼っている。冷泉院にも寵遇さえ、臣下として申し分ない身分だが、薫には気がかりなことがあった。なぜ母は若くして出家したのか。幼い頃にもれ聞いた噂について、誰にも聞くことができず、薫は一人煩悶するのだった。
木村朗子(田口榮一監修『すぐわかる源氏物語の絵画』東京美術より)
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