第四十一巻 幻(まぼろし)

あらすじ

 紫の上の亡きあと、源氏の気持ちは晴れることがない。新年を迎えて六条院にはいつものように来賀の人々が集ったが、管弦の遊びなどもなくひっそりとしていた。このごろでは源氏はめったに人に会うこともないのであった。
 六条院の女君たちと一夜を過ごすことも絶えてなかった。源氏は、紫の上の誰にも比べようのないほどのすぐれた人柄を思うにつけ、「なぜ女たちとあだめいたつきあいを重ねてきたのだろう。おおらかに許してはくれたけど心のなかではどんなに苦しんだことか」と、今になって思いやるのでだった。幼いころから六条院に仕え、紫の上もかわいがっていた中将の君という女房だけをそばにおいて心をなぐさめている。すぐさま後を追うような出家はかえってみっともないと、紫の上の法事に日々を過ごしながら一年がたった。年末の御仏名の日、源氏は昔にもまして光輝くような姿を、久しぶりに人前にみせたのであった。
 木村朗子(田口榮一監修『すぐわかる源氏物語の絵画』東京美術より)

 

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