あらすじ
父院の死後、世の中が一変し、源氏は物憂い日々を過ごしていた。桐壺院に仕えていた麗景殿女御は御子などもなかったため、今は里で心細げに暮らしている。源氏は宮中でたまさかの逢瀬をもった麗景殿の妹、花散里のことを思い出し、桐壺院亡きあとの零落の愁いを語り合おうと出かけていった。
道中、中川のあたりのこぢんまりした邸から、琴の音が聞こえてくる。趣深い風情に目をとめるとかつて一度、宿りした家である。ずいぶん時がたっているので忘れてしまったかもしれないと思いつつも声をかけてみたが、光源氏と知ってあえて空惚ける返事。時勢をみて、迎えて入れてはくれない人もあるのだった。
花散里は、久しぶりに訪れてきた源氏と、無沙汰の恨みも忘れて親しく語らう。源氏は縁あった女君たちをすっかり忘れていしまうことはなくて、こんな不意の訪れもあるので、なおのこと女たちはやきもきさせられるのだった。
木村朗子(田口榮一監修『すぐわかる源氏物語の絵画』東京美術より)
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