あらすじ
紫の上は、先に重く患って以来、気分のすぐれぬ日々をおくっていた。後の世のためにも出家したいと、ことあるごとに源氏にもらすのだが許されない。
三月の花ざかりのころ、紫の上は自らの里邸とする二条院で法華経千部供養を催した。紫の上は特にかわいがっていた明石の中宮の三の宮、まだ幼い匂宮を呼び寄せて、大人になったら二条院に住むように遺言する。
秋のころ、明石の中宮が紫の上を見舞った。源氏はいつになく気分のよさそうな姿を見て喜ぶが、紫の上はそんな源氏を見るにつけ、自分が死んだらどんなにか嘆くだろうと胸を痛めている。
明け方、露の消えゆくように紫の上は亡くなった。夕霧は、野分のときに垣間見た紫の上の姿が忘れがたくて、几帳を引き上げ最後の対面を果たす。そこに夕霧が見たのはあのときの面影そのままに、心衝かれるほど美しい死に顔であった。
木村朗子(田口榮一監修『すぐわかる源氏物語の絵画』東京美術より)
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