あらすじ
内大臣がとんでもない姫君を引き取ったという噂は、誰もが知るところとなった。こんなことはひた隠すべきなのに、娘のために気の毒だと源氏は思う。この一件を耳にして、ひたすら実父に会いたいと願っていた玉鬘は、内大臣の気に入らなければ自分も恥をかいていたかもしれないと、今さらながら源氏に感謝するのだった。厭わしい口説き文句を並べるものの、さりとて無体なまねはしない源氏に、玉鬘はなじんでいった。
秋風の涼しいころ、二人は琴を枕にして寄り臥している。黒髪のひんやりとした手触りは気品があって、姿は美しく、身を固くしているようすはかわいらしい。それでも源氏は自らを抑えて立ち上がる。折から、東の対で柏木の笛の音が聞こえてきた。源氏は若い公達を呼び寄せて、篝火のもとで合奏をさせる。御簾の内で玉鬘は、はじめて間近に接したこうだいたちのようすに耳をそばだてるのでだった。
木村朗子(田口榮一監修『すぐわかる源氏物語の絵画』東京美術より)
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