あらすじ
六条院は落成後はじめての正月を迎えた。紫の上が住まう春の御殿は、梅の香に満ちてこの世の極楽のようである。源氏は紫の上から順に女君たちを訪ねてまわる。明石の姫君のところには実母からの文が届いていた。鶯の初鳴きになぞらえて、「初音を聞かせよ」とある。源氏は明石の君を思いやり、姫に返歌を促す。夏の住まいは花散里の居所である。この女君とはもはや男女の睦み合いはないが穏やかな仲であった。
西の対の玉鬘はまだ住み慣れぬようすだが、若やかな美しさは娘としておくのに惜しいほど。暮れ方に明石の君のもとへ渡る。新年早々、紫の上の機嫌を損ねそうだが、その夜は明石の君のもとで過ごした。
翌日に管弦の宴が催されたが、末摘花はそんな華やぎも他所に聞く二条の東院に住まっている。年末に源氏が贈った見事に織られた袿も末摘花には似合っていない。兄僧に下着をやってしまったとかで、薄着でふるえながら、相変わらず鼻の頭を真っ赤にしているのだった。
木村朗子(田口榮一監修『すぐわかる源氏物語の絵画』東京美術より)
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